2024年
4月
掲載記事
雑誌情報
書籍情報
寄稿論文
編集室員論文
最新の特集記事
過去の記事検索
バックナンバー
(1〜55号)
既刊+Web版
記事検索
過去のレビュー
講演・展示レポート
主催・共催セミナー
YouTube講演
直近で実施したセミナー
過去のセミナー
招聘講演

講演リスト

ご利用ください
文書管理用語集
編集室だより
最新送稿
編集主幹紹介
過去の編集室だより

文書管理通信について

小紙の記事構成
「文書管理通信」の歴史
文管ギャラリー
TOPページ変遷
プライバシーポリシー

トップ 最新号 > 特集 > 7.求められる統合(総合)文書管理システムの機能
7.求められる統合(総合)文書管理システムの機能
 

統合(総合)文書管理システムの導入に際して、ペーパーレスオフィスの実現が目的の一つに挙げられることが多い。しかし現実には、既に導入された団体において劇的に紙の文書が減ったという話しをこれまで聞いたことがない。

現時点でシステムが導入されている団体の事例を見る限りにおいて、電子的にシステムに格納される文書は、収受した電子文書と自庁で電子的に作成する起案文書と添付資料であって、発生文書全体のボリュームの中でその比率は紙で発生する文書に比較して決して大きいものではないようである。

システム導入後2年を経過しても、文書全体の20%程度しか電子化されておらず、残る80%については書誌情報さえ登録されていないという事例も聞いている。

官民の高度情報化の進行によって、収受文書もいずれ電子ファイルとして送付を受ける比率が高まり、また自庁でも紙ではなく電子的に作成する文書の比率が高まり、総体として徐々にではあるが紙文書の発生量は減少し、やがてペーパーレスオフィスが実現するであろうという楽観的な見方もある。

一方で「紙文書は絶対になくならない。紙文書の総量も劇的には減少しない」と断言する文書管理コンサルタントや文書管理担当者も多い。

以上の楽観的な見方と、悲観的な見方の両方について、いずれが正しいのかを検討することは重要であるが、ここではとりあえず「当面の間、紙文書の発生量は劇的には減少しない」という前提に立ち、この事実が引き起こす文書管理上の問題について考えてみたい。

統合(総合)文書管理システムを導入しても紙文書が減らないという現実は、導入した団体にとって、統合(総合)文書管理システムに並行して、紙文書を物理的に管理するシステム(=ファイリングシステム)を同時に今後も維持し続けることを強いることとなる。

またこのことは、文書発生と管理のあらゆる局面で、常に「紙と電子の使い分け」を意識して行なうという煩雑さを職員に強いることにもつながる。

統合(総合)文書管理システムの導入によって高い事務効率を実現することが求められているにもかかわらず、むしろ導入は余分な負荷を職員に負わせ、場合によっては文書管理専任者を増やさなければならない事態を引き起こす事も想定されるのである。

以上の問題を解決する手立てとして、統合(総合)文書管理システムに求めるられる機能を以下の(1)、(2)として提示したいと思う。

(1) 紙で発生する文書の磁気画像化を簡単に行う事が可能なインターフェースの必要性
 

本章の前書きで述べたように、紙文書の発生量そのものは当面減らせなのであるが、それにしても、発生した紙文書の全てを磁気画像化してシステムに取り込み、結果として原課での紙文書管理を消滅させる事はできないのだろうか?

これがもし実現できれば、2年後には引継ぎされる原課文書は全て電子的ファイルとなって、文書管理主管課の管理に廻る紙文書は消滅することになる。

従前に引継ぎされている保存文書はそのまま紙文書で残るにしても、期限保存の紙文書は年とともに廃棄され、やがて保存書庫には永年(的)保存文書のみが残る事となる。

少なくとも原課においては、ペーパーレスオフィスが実現し、また紙文書を物理的に管理するファイリングシステムを並行して維持する煩雑さも消滅する事となる。

現時点での各社のシステムでも、スキャナで磁気化した紙文書を添付文書として所定の位置に格納する事は可能であろう。にもかかわらず実態として紙文書の磁気画像化が進捗していない理由は、磁気化してシステムへの保存するという一連の処理を簡便に行なう仕組みが出来上がっていないことにあるかと推測する。

統合(総合)文書管理システムでの文書の作成や登録の途中に、スキャナが置かれている場所まで行って磁気画像化を行い、出来上がった磁気画像ファイルを、時には別媒体で自身のPC端末まで持ち帰り、さらにこれをシステム内の所定のフォルダ位置に格納するという一連の作業に、手間と時間があまりにかかりすぎる点が阻害要因になっているのではないか。図面などの定形外文書が有る場合は、更に面倒な処理が必要となる。

磁気画像化を外部業者に委託する方法もあるが、これはこれで相当額の費用がかかる。手間と時間がかからず、デスクに座ったままで、誰でも( IT スキルが低い職員でも)簡単に処理することを可能とするインターフェースが統合(総合)文書管理システムに備わっていれば、発生する全文書の磁気画像化は必ず進捗するであろう。(図面の場合などは座ったままでという訳にはいかないだろうが)

仮に以上のインターフェースの実現に費用面や技術面の壁が有ったとしても、このことの実現無しに紙文書は減らないのであり、結果として統合(総合)文書管理システムに本来求められる高い効率化も、限定的にしか実現できないのである。

(2) 紙文書の物理的管理=ファイリングシステムの維持管理面での支援機能
 

少なくとも現時点では、紙文書は依然として発生し続けているのである以上、統合(総合)文書管理システムと並行して紙文書のファイリングシステムは維持されなければならないことは本章冒頭で述べた。

統合(総合)文書管理システムのメーカー側では、紙文書のファイリングのことはファイリングシステムのコンサルタントにでも相談すべき問題ではないかと言われるかもしれないが、「統合」あるいは「総合」と冠のついたシステムであり、また文書管理全体を視野に入れた効率化を目的としたシステムである限り、これに対する支援機能を何らかの形で提供することが求められのではないかと考える。またこのような機能を持つことは、各社システムごとの付加価値としても評価される事となるのではないだろうか。

求められる機能イメージとしては、個々の職員に配備されている統合(総合)文書管理システムの端末の中に、ファイリングシステムで言うところのファイリングクラークが納まっているような、と言ったらよいだろうか。

統合(総合)文書管理システムでの文書の取り扱いと並行して、紙文書の発生から廃棄に至る各過程で、一般職員に紙文書のファイリングのガイダンスを行い、また原課職員と文書管理主管課職員が実施する時期ごとの管理作業を職員に代わって実施する、あるいは手助けを行う機能を、統合(総合)文書管理システムの中に組み込むことができないかと思うのである。

以下必要と考えられる支援機能を列記する。

  1. 統合(総合)文書管理システムで起案した文書及び書誌情報のみを格納した文書について、格納すべきシステム内のフォルダ位置を指定するとともに、紙文書のフォルダ(あるいは簿冊)名称や格納すべきキャビネットとその位置を判り易く指定するガイダンス機能
  2. 文書発生から 1 年経過後の所定時期に、ファイリングシステムのルールに従って、紙文書が格納されているキャビネット内での移し変えを行うよう報知し、かつその具体的な方法をガイダンスする機能
  3. 文書発生から 2 年経過後の所定時期に、ファイリングシステムのルールに従って、キャビネット内の紙文書を文書管理主管課に引継ぎする対応を報知するとともに、引継ぎの方法、手順をわかりやすく指導するガイダンス機能及び引継ぎ実務に必要な当年度引継文書課係別目録、保存箱単位の格納文書目録(一般的には廃棄年度別、自動附番された保存箱単位で出力して保存箱表面に貼付するか文書とともに箱内に格納)、所定の保存箱番号が附された保存箱貼付用ラベルの出力機能
  4. 文書管理主管課における保存文書の廃棄に際して、廃棄文書の課別一覧表の作成及び各原課での廃棄承認、保存期限延長等の変更情報処理機能
  5. 文書の当年度廃棄〜当年度引継ぎに際して、文書庫内の適正配置を決定するための支援機能
  6. 文書庫内保存文書の原課への貸し出し及び返却管理機能
  7. 保存文書の廃棄年度別、保存年限別などの統計値表示機能
  8. 文書廃棄に際して、歴史的公文書(アーカイブス)として公文書館等に引き継ぐべき文書の抽出支援機能
 
前ページ 次ページ

Copyright(C) 2005 NPO Ageing Bright Club. All Rights Reserved.
E-mail:info@bunkan.jp