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講演・展示会レポート

【 日本アーカイブズ学会 2007年度大会 】に出席して

当日の自由論題発表の中に、「写真」に関する研究発表が2題あった。
@ 「文書の中の写真」再考 ―国立国会図書館憲政資料室の事例から  
国立国会図書館 主題情報部 葦名 ふみ
A 写真史料学試論 ―台紙付写真の分析から―  
埼玉県 飯能市郷土館 尾崎 泰弘
今回は、尾崎氏の研究発表(A)について紹介させていただきます。
【 自由論題研究会 】

『 写 真 史 料 学 試 論 』 ―台紙付写真の分析から―
尾 崎 泰 弘(埼玉県 飯能市郷土館)
【 写真の有する歴史情報 】
撮影目的(動機)
被写体(人物、撮影場所を含む)
撮影時期
撮影者及び撮影依頼者

現 状
 
【 復元の手がかり 】
失われた歴史情報の一部を復元していく手がかりとして 写真台紙 に注目し、その形式変化をもとに写真の撮影年代(正確には台紙の使用年代)の関係を明らかにしようと試みている。
 
【 分析対象 】・・・飯能市郷土館で所有の台紙付写真 約980点
 
【 写真台紙の構成要素 】
写真台紙の構成要素 飯能市郷土館での結果
形 状 :「切り込み」の有無・形状・位置
 *4周に連弧状の切り込み  ⇒ 長辺30cm以内の小さい台紙にみられる
 *4辺とも中央に鋸歯状の切り込み
台紙と写真の面積比 :台紙と写真の間の余白の大きさ
 *余白大  
 *余白少  ⇒ 明治35年以前の台紙に多い
写真の貼付枠 :デザイン、加工方法
 *印刷だけの平面的な文様・枠線    ⇒ 明治期
 *凹凸を施したもの    ⇒ 明治36年以前には見られない
色・紙質 :グレースケールにより分類
 *濃い色のもの  ⇒ 古いものに多い
 *薄い色のもの  ⇒ 昭和以降の新しいものに多い
撮影者情報 :写真館のロゴマークの変遷
 *時代とともに変遷をしている。  ⇒ 創業(M43)〜S13の間に5種類の
ロゴが使用されている。
ロゴマークが並存されている場合もある
注)5.ではロゴマークの無いものが有り、これはロゴ入りより以前のものと考えられる。
これらの中には「Artistic」「Photographer」等の英単語が印刷されているものもあった。
「台紙付き写真の形式」「写真館ロゴマークの変遷」(こちら)を参照して下さい。
 
■ 注意すべき点
上記のような傾向が見られるが、写真が撮影された時期と台紙が使われた時期が
一致しない例も見受けられるので注意を要する。
これは、写真館での台紙作成のタイミングならびに管理から来る現象と推察される。
 
【 写真の歴史情報を含む他の要素 】
要  素 内   容
写真袋 写真館が台紙付き写真を収納し顧客に渡した袋
収納容器
写真箱、行李
台紙付き写真は文書類に比べて格段に大きいため別に収納されている
場合が多い。(たて34cm x 横42cm 前後)
関連文書 撮影動機に関係する歴史事象についての文書
同一写真の所蔵先 どの家で同じ写真を所蔵しているか?
  撮影依頼者、撮影目的関係者を探る重要な手がかりとなる
 
【 まとめ 】
報告者は “写真史料学への展望”として次のようにまとめている。

* 写真台紙には撮影年代を限定できる要素が含まれている。
⇒ 特に写真館のロゴマークの変遷は有効である。

* 台紙の形式による撮影時期の推定は絶対とは言えない。
⇒ 常に写真の画像分析や他の写真との比較、文書内容との照合などによって検証していくべき
である。

 
【 主要参考文献 】
吉田 成 「古写真の調査・鑑定に関する一考察」―人物写真を中心に―
(『東京大学史料編纂所紀要第9号』 1998年3月)
『時の記憶 ―飯能の写真展―』 飯能市郷土館 1998年10月
『写真資料目録T −明治〜昭和初期―』 飯能市郷土館 2003年 3月
 
 
レポート文責 : 「文書管理通信」編集室 主幹 中村信幸

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