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「バ」か「ヴァ」 (バーチカルファイリングの今を考える)

この4月以降、外国の国名表記から「ヴ」が全く消えました。3月末に「在外公館名称位置給与法」が改正されたためです。勿論、「ヴ」は国名から消えても、日常よく目にします。朝日新聞の記事によれば、「最近は国際化が進み、若い層ほど原音に近い表記を好む傾向がある」とされています(2019/5/23,p25,遠藤雄司記者)。

ところで、文書管理の世界では、ファイリングシステムと言えば、バーチカルファイルによるファイリングを指す、と多くの文献に出ています。個人的には「ヴァーティカル」という表現がピタッとくるのですが、「ヴ」を用いた文献・書籍は、ps欄記載のものを除き、あまり見当たりませんでした。なぜなのでしょうか?

ともあれ、バーチカルファイリングは、文書管理通信No.11(で紹介されているように、アメリカで1876年に考案され(一説には1892年)、普及したものです。日本では、敗戦後、連合国軍やアメリカ企業の事務管理を目の当たりにしてから、事務管理にも科学的管理法を導入し、能率増進を図らなければならない、というベクトルが大きく働き、導入が推進されたようです[1]。

バーチカルファイリングというのは、書類を予め決められた分類に基づき、表題を記したフォルダに入れ、ファイリングキャビネットの引出し(ドロワー)に縦に並べ、分類見出しにより区分し、常時即時に書類を取り出せるようにしておく方式とされています[2]。当時、この「常時即時検索可能」という側面が、体系的組織的に機能していない「文書分類法」に基く簿冊型による日本のファイリングと、大きく異なったようです。

しかしながら、「ファイル基準表」による管理が整い始め、電算化でキーワード検索が可能になった今、即時検索という観点でのバーチカルvs簿冊論争は不毛になったのではないでしょうか。適切でMECEな(重複なく、漏れなく)ファイル基準表と、的確な文書のライフサイクルマネジメントの実践こそが、今求められている文書管理の要になる、と考えています。

現在、文書管理に求められる機能は、極めて多岐に亘ってきています。しかも、それぞれ条例や法律などに準拠しなければならず、以前のように、文書の私物化が容認される時代ではありません。「文書は公のもの」「文書は行政と住民との共有財産」という認識の下、電子技術の進展を踏まえながら、効率的な文書管理の推進に少しなりとも貢献できれば幸いに思っています。

 

[1] 「公文書をつかう 公文書管理制度と歴史研究」  瀬畑源著、青弓社刊、2011/11/20

[2] 「日本と欧米における技術文書管理の比較」  大野邦夫、情報処理学会研究報告,DD93-1(2014)

文書管理通信編集委員見習い 樹令(いつき・れい)

2019年6月7日

 

ps) 「ヴァーティカルファイリング」という語が用いられていた文献・図書など
 ○ 「公文書をつかう 公文書管理制度と歴史研究」瀬畑源著、青弓社刊、p.36 (2011/11/20)
 ○ 1965年発行「トーホー ファイリングシステム」販売資料
    引用元 ; 「文書と記録」高山正也監修、樹村房刊、p200 (2018/6/26)
 ○ 「事務用家具の標準化━JISとファイリング・システム━」 北田聖子(日本学術振興会)
   平成20年度科学研究費補助金による研究成果の一部
   http://www.jasis-kansai.jp/ronbun/2009_suisen/001.pdf


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