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トップ 最新号 >特集2−2−3.導入ブーム後のファイリングシステム崩壊の原因とは
2−2−3.導入ブーム後のファイリングシステム崩壊の原因とは
 

米国と日本におけるファイリングを巡る背景と環境の相違を見てきたが、結論としては、米国的環境から生まれたファイリングシステムを、米国とは明らかに異なる社会背景を持つ昭和の大合併の時期の日本の組織に、その技術的側面だけ移入したことこそが崩壊の主原因であったと、総論としては考えて良いと思う。

その中でも、特に決定的かつ直接的な要因となったのは、2−2−1末尾に触れた米国での専門要員の雇用と配置の考え方が、ファイリングシステムの技術とともに採用されなかったことにあった。

この直接的原因を次の(1)で、遠因と推測される文書の分類方式のミスマッチの問題について(2)で少し詳しく説明する。

(1) システムを維持継続させるための人的コストの不足
 

ファイリング教育を受け、ルールを守る窮屈さや不自由さを当たり前と感じている一般の組織構成員と、更にまたその上に資格者である専門要員が配置されることで、初めて米国のファイリングシステムが維持管理されている事は既に述べた。

これに対して日本では、組織の一般構成員へのファイリング教育は、せいぜいその組織に加入(就職)してから簡単に行なわれる程度であり、ファイリングでの窮屈さや不自由さを当たり前として受け容れる意識が育っていない。

更にまたこれら一般構成員を管理、指導する文書管理専任の職員が組織内の要所に配置されているケースは例外であり、特に小規模の団体、組織においては他の業務と兼任しているのが常態である。

本項冒頭にも述べたが、米国のファイリングシステムの形、技術のみを移入し、本来それを支えるべき文書管理専任者の配置という人的コストを掛け得なかったことこそが、昭和の大合併期にこぞって導入されたファイリングシステムの崩壊の最大要因である。

本章2−1の(1)、(2)の理由があってファイリングシステムの導入ブームが起こったのであるが、結果として言えば、仏を造って魂入れずの喩えの通り、魂たる人的コストの負担があまりにも少なすぎたのであって、ファイリングシステムの崩壊もまたやむをえなかったものと考えられる。

(2) 文書分類方式のミスマッチ
 

既に述べた日本と米国のファイリングを支える社会環境の相違が、日本におけるファイリングシステムの定着を阻んだ最大の要因であったと結論付けてよいと考えられるが、もう一点、この時点で採用された「文書分類方式」が「割付方式」(ファイル形態はバーチカルファイル方式)であったことも、定着をより困難なものにさせる原因であった可能性が考えられる。

「割付方式」では、予め組織内の全ての部課係をまたいだ文書分類表を作成する。

第1ガイド、第2ガイド、個別フォルダーといったように上から下へ分類を決めていく方式である。日々発生する文書は、各課でこの分類に合わせて個別フォルダーに収納し、キャビネットに保管され管理されることとなる。

この方式では、決められた分類の変更は原則として認められないため、1フォルダー内の文書量がフォルダーに格納できる量を超えてしまうケースや、逆に文書数枚しか入っていないフォルダーが発生するケースなどが生じ、その意味で物理的変化に対応しにくい方式であると言える。

この方式の検索面においては、全庁、全組織に共通の分類であるため、部、課、係間の相違は無く、たとえ職員の異動があっても支障なく使える利点は有るのであるが、このことは反面で、部、課、係ごとに固有で認知し易い任意のガイドやフォルダー名を付けられない事にもつながる。結果として抽象的なガイド名、フォルダー名のどこに必要な文書があるかの判断に窮することがまま生ずる欠点をも持っている。

図書館で必要な本を探す際に、本の表題は判っているのだが、図書分類の上層の分類、例えば総記、自然科学、政治、文化、宗教などの分類のどこに有るのかが判らないといった経験をすることが良くあるが、割付方式でも同じようなことが生じがちなのである。

以上見たような割付け方式の難点から、ファイリングシステムの有用性が減じ、結果としてシステムの崩壊に到ったという事例もあったのではなかろうか。もしこの時期に導入されたシステムの分類方式が「割付方式」ではない、より現実に即したものであれば、あるいはもう少しファイリングシステムの定着率も高い結果となったかもしれない。

文書分類法式には割付け方式とは別に積上げ方式がある。これは予め規定した文書分類は用いず、日々発生する文書の内容やその文書量に合わせて分類を下から上へと積上げてゆく方式である。

抽象的になりがちな割付方式の分類に較べて、実際の利用者にとってより現実的、感覚的に理解し易い方式であり、また各々の発生量に応じてファイル分類を行うという意味でも文書量の管理がしやすい仕組みをもっている。これは「割付方式」の欠点を補う形で、その後(註 1 )に日本で考案された分類方式である。

前出の「ファイリング&情報共有なるほどガイド」によれば、昭和39年に改訂出版された三沢仁氏の「ファイリングシステム三訂」で積上げ方式が提唱(二訂までは「割付方式」)され、その後の日本におけるファイリングシステムの分類方式の主流となった・・とある。

註1: 昭和の大合併が昭和28年〜36年にかけてであり、また資料2の導入団体数は昭和44年6月の数値であるため、昭和の大合併に際して多くの団体で導入されたファイリングシステムの分類方式が実際にいずれであったかは特定ができないのであるが、かなりの比率で割付方式が採用されたのではないかとの推定に立って、崩壊の遠因を「割付方式」に求めていることをご了承いただきたい。
 
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