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トップ 最新号 > 特集 > 4.バブル崩壊以降の時代の中での、注目すべき文書管理上の試み
4.バブル崩壊以降の時代の中での、注目すべき文書管理上の試み
 

年号が平成に変わり、バブル崩壊以後の時代を迎えるこの時期、注目すべき現象が現れてくる。小誌でも過去に取り上げた広島市(13号/平成6年)や足立区(32,33号/平成9年)におけるコンピュータによる文書管理の試みである。

広島市では平成4年に、財務会計用のオフィスコンピュータとネットワークを活用し、起案文書の電子的作成(過去の起案文書の参照機能含む)と蓄積、書誌情報の作成と検索、ファイル基準表(整理表)作成、引継ぎ文書目録自動生成、廃棄予定文書一覧の自動生成等、文書の発生から廃棄に到る一般職員の文書事務及び文書管理主管課による文書管理事務を支援するシステムを開発し試験導入している。

ここではまだ WindowsPC によるシステムではなくオフコンレベルのシステムであり、また高額なオフコン端末の配備は、全庁全課に行きわたるものではなかったし、作成された起案文書はホストコンピュータ側に転送して保存されるものの、他のデータの保存は3.5インチFDを使用するなどの制約もあった。(平成4年時点で11課のモデル課のみに各1台の端末配備)

しかし平成4年以前に既に電子的な文書管理に着目し、文書管理のコンピュータシステム化を企図したこと自体、すぐれて先見的な試みであった。

ちょうど広島市で試験導入が始まった頃、足立区でも同種のシステム構築が区民への情報公開の迅速化を主目的として検討され、平成6年1月から開発に着手し、平成8年には実稼動が始まっている。

広島市との大きな相違は、システムを Windows (3.1 OS )のクライアントサーバ方式で構築している点と、作成された決裁文書のシステム上での回議、電子決裁機能などが含まれる点であり、今日各コンピュータメーカーが提供している統合(総合)文書管理システムで提供される範囲と大差無い機能を持っていることは驚きである。また広島市が各課への端末配備に苦労していたのに対して、足立区ではシステム開発期間中に全課、全職員に1台のパソコン端末が配備されている点は注目される。

他の団体でのこの時期の同種の試みが有ったかどうかは不明であるが、足立区のこの試みは、おそらく全国に先駆けてのものであり、また足立区のこのシステムはその後に様々なメーカーから販売が開始される統合(総合)文書管理システムのプロトタイプとなったと言ってよいのではないかと思う。

広島市と足立区の相違は企画と着手のわずか2年ほどの時期の違いに起因するものと考えられる。

この間(平成4年)にマイクロソフト社の Windows 3.1がリリースされ、また PC ネットワーク機能においても大きな技術革新が起こっていることは重要である。それ以前の DOS マシンでは到底できなかったことが、 Win 3.1の出現で可能となったのである。

広島市でできなかったことが足立区で実現可能となった唯一の理由はこの点であった。

全職員への端末配備にしても、広島市が高価なオフコン端末であったのに対して、足立区で配備したパソコン端末は格段に安価となっていたのである。

以上見たような相違があったにせよ、実に重要であるのは、広島市、足立区の試みが、文書管理をコンピュータシステムに載せ、これをもって文書管理あるいは紙文書のファイリングにまつわる煩雑な事務を支援する意図をその開発の方向性として持っていたことであり、またこの事こそが、米国のように「人的パワーとコスト」を負担することが体質的に困難なわが国において、ファイリングシステムにまつわる「不自由さ」と「窮屈さ」を人的コストを増やすことなく克服する唯一の道ではないかと、公共団体の多くの文書管理担当者に感じさせたことにあったのではなかったろうか。

2−2−4の末尾にも述べたが、財政の慢性的な赤字が表面化し、職員の増員もままならず、一方住民サービスのより高い質と量が問われ、事務量も一段と増加する中で、現状の人員の中で最大限の事務効率を図らなければ組織自体として成り立たない時代に入らなければ、ファイリングシステムを維持するための適正な人的コストを負担する機運は生まれ難いのである。

この機運が生まれる時代こそバブル崩壊期にあたるのであろうが、しかし一方で赤字財政に苦しむ団体であればあるほど、人的コストを負担することが困難となるという自己矛盾を抱えなければならないことにもなる。

先駆者である広島市や足立区の試み以降の平成10年代半ばには、各メーカーが競って統合(総合)文書管理システムを販売開始する。

またその費用も、パッケージソフト化されることで、広島市や足立区の自己開発に要した費用に比べれば格段に安価なものとなった筈である。

このような条件が整う中で、いよいよ平成の大合併の渦中に突入し、その中で本格的に、かつ切実な問題として文書管理とファイリングシステムの問題を捉えなおさなければならない時代を、多くの市町村は迎えるのである。

広島市、足立区の試みについては、前述した文書管理通信13、32、33号に、コンピュータシステム導入前の紙ベースのファイリングシステム導入経緯や当時の文書管理の現況の説明とともに詳述されているので、ぜひこの機会にご一読いただきたい。

 
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